navy blue〜お受験の恋〜
「桜、散っちゃったねぇ。」
小さな手をのべて、乃亜が公園の桜の木を指差した。
近所の公園をピンク色に囲んでいた見事な桜も、あっという間に散り緑の葉をたたえている。
「そうだねぇ。散っちゃったねぇ。次はどんなお花が咲くんでしょ。」
歌うようにみちかが答えると、乃亜はキャッキャと笑った。
手を繋ぎ公園の中の集合場所へと向かう。
みちかと乃亜がたどり着く頃、ちょうど反対側の入り口から乃亜と同じクレマン帽子を被った園児が公園へと入ってきた。
「あ、乃亜ちゃん!」
その乃亜と同じクラスのたけとくんは乃亜を見ると嬉しそうに声をかけてくれた。
乃亜は照れるように無言で笑い立ち止まった。
「おはようございます。」
「おはよう。」
続いて到着したたけとくんのお母さんとみちかも笑顔で挨拶を交わす。
やがてパラパラと8名の園児が到着し、幼稚園の智香先生も到着をすると、いつも通りの朝の挨拶が始まった。
「先生、おはようございます。」
「お父様、お母様、行って参ります。」
横一列に並んだ園児たちは深々と頭を下げ、先生に指示された通りの2人組になると、手を繋ぎ公園から歩道へと歩き出す。
母たちはその姿が見えなくなるまで見守る。
乃亜の幼稚園は、徒歩通園だった。
季節を感じながら、自分の足で1キロほど離れた園まで歩くその登園方法は今時珍しく足も鍛えられるし、近所というのが何より安心で、ここへの入園を決めたのが2年前。
園生活は想像以上に早くて、いよいよ乃亜はこの4月から年長になった。
その歩いていく小さな後ろ姿には3年目の貫禄が頼もしく感じられる。
みちかは公園を後にした。
公園を逆戻りしてほんの少し歩けば自宅だ。
家へ戻ると、洗濯機の脱水がちょうど終わったところだった。
みちかはベランダへ出るといつものように色彩がグラデーションになるように、洗濯物を次々と干していった。
ほのかな洗剤のティーツリーの香りが爽やかに広がって、まるで見えないエフェクトのように青空へ昇っていくようだった。
みちかは小さく息を吸い、吐く。
いい天気だなぁ、と思いながら悟の水色のワイシャツが風にはためくのを見ていると、どこからか電話の鳴る音が聞こえる事に気付いた。
慌てて部屋に入り、ダイニングテーブルの上のスマートフォンを手に取った。
小さな手をのべて、乃亜が公園の桜の木を指差した。
近所の公園をピンク色に囲んでいた見事な桜も、あっという間に散り緑の葉をたたえている。
「そうだねぇ。散っちゃったねぇ。次はどんなお花が咲くんでしょ。」
歌うようにみちかが答えると、乃亜はキャッキャと笑った。
手を繋ぎ公園の中の集合場所へと向かう。
みちかと乃亜がたどり着く頃、ちょうど反対側の入り口から乃亜と同じクレマン帽子を被った園児が公園へと入ってきた。
「あ、乃亜ちゃん!」
その乃亜と同じクラスのたけとくんは乃亜を見ると嬉しそうに声をかけてくれた。
乃亜は照れるように無言で笑い立ち止まった。
「おはようございます。」
「おはよう。」
続いて到着したたけとくんのお母さんとみちかも笑顔で挨拶を交わす。
やがてパラパラと8名の園児が到着し、幼稚園の智香先生も到着をすると、いつも通りの朝の挨拶が始まった。
「先生、おはようございます。」
「お父様、お母様、行って参ります。」
横一列に並んだ園児たちは深々と頭を下げ、先生に指示された通りの2人組になると、手を繋ぎ公園から歩道へと歩き出す。
母たちはその姿が見えなくなるまで見守る。
乃亜の幼稚園は、徒歩通園だった。
季節を感じながら、自分の足で1キロほど離れた園まで歩くその登園方法は今時珍しく足も鍛えられるし、近所というのが何より安心で、ここへの入園を決めたのが2年前。
園生活は想像以上に早くて、いよいよ乃亜はこの4月から年長になった。
その歩いていく小さな後ろ姿には3年目の貫禄が頼もしく感じられる。
みちかは公園を後にした。
公園を逆戻りしてほんの少し歩けば自宅だ。
家へ戻ると、洗濯機の脱水がちょうど終わったところだった。
みちかはベランダへ出るといつものように色彩がグラデーションになるように、洗濯物を次々と干していった。
ほのかな洗剤のティーツリーの香りが爽やかに広がって、まるで見えないエフェクトのように青空へ昇っていくようだった。
みちかは小さく息を吸い、吐く。
いい天気だなぁ、と思いながら悟の水色のワイシャツが風にはためくのを見ていると、どこからか電話の鳴る音が聞こえる事に気付いた。
慌てて部屋に入り、ダイニングテーブルの上のスマートフォンを手に取った。