navy blue〜お受験の恋〜
サンライズ本部、3階の体育館の隅で、友利みちかは娘の乃亜と向き合っていた。
赤い生地に10という文字が白抜きされたゼッケンを付けたポロシャツに紺色のキュロットを履いた乃亜は落ち着かない様子でキョロキョロと周囲を見渡す。
固めに結った三つ編みが忙しく揺れる様子に、みちかもソワソワした。
「乃亜ちゃん、お茶は?飲んでおく?」
「うん。飲みたい。」
乃亜に水筒を渡し、みちかも体育館を見渡した。
普段はよその支部に通っている子や外部の子も含め今日の受講生は60人は居そうだ。
皆、体育館のあちこちで母親と過ごしている。
白のポロシャツに男子は紺色の短パン、女子は同じようなキュロットを履き、騒ぐ事もなく静かに模試の時間が来るのを待っている。
採点をするサンライズの講師も、今日は10名ほど居るのだろうか。
遠くの方には、いつもの体操着ではなくワイシャツにネクタイを締めた関崎の姿もあった。
無意識にみちかは百瀬の姿を探していた。
「百瀬先生居ないね。」
乃亜を見ると、水筒を両手で持ち不安そうな顔をして体育館を見回している。
てっきり他の子供たちに圧倒されていたのかと思っていたけれど乃亜も百瀬を探していたのか、とみちかはほんの少し驚いた。
「そうね。今日はいらっしゃらないのかしら。」
ひどくがっかりした気持ちになりながら、みちかは乃亜から水筒を受け取る。
腕時計を確認すると12時45分だった。
あと15分で模試は始まってしまう。
百瀬は模試よりももっと大事な仕事ができてしまったのだろうか。
みちかは息を吸い込みそっと吐き出すと、乃亜の視線に合わせてしゃがみ込み乃亜の手を取った。
「乃亜ちゃん、確認するわね。先生がお話しを始めたら?」
「静かに先生の目を見てお話しを聞きます。」
みちかは乃亜の目を見つめ、うんうんと頷いた。
「お名前を呼ばれたら?」
「大きな声でお返事をします。」
「お友達と自由に遊ぶお時間になったらどうするんだっけ?」
「1人で遊ばないで、お友達と仲良く一緒に、遊びます。」
みちかが満足そうに微笑むと、乃亜もニコッと笑った。
「頑張ってね。」
大丈夫、乃亜は落ち着いている。
乃亜の肩に手を載せみちかが頷いたその時、乃亜が小さく「あっ…。」と、声を漏らした。
「お待たせ致しました。模擬試験開始10分前になりましたので、受講者の皆さんはこちらにお並びいただきたいと思います。まず1から15までのゼッケンをつけているお子さまから並んで頂きます。こちらのスタッフのところまでお連れください。」
乃亜の視線の先にはマイクを持ち話す百瀬の姿があった。
みちかは立ち上がり、乃亜の手を握りしめる。
みちかは自分の胸が、一気に高鳴るのを感じていた。
赤い生地に10という文字が白抜きされたゼッケンを付けたポロシャツに紺色のキュロットを履いた乃亜は落ち着かない様子でキョロキョロと周囲を見渡す。
固めに結った三つ編みが忙しく揺れる様子に、みちかもソワソワした。
「乃亜ちゃん、お茶は?飲んでおく?」
「うん。飲みたい。」
乃亜に水筒を渡し、みちかも体育館を見渡した。
普段はよその支部に通っている子や外部の子も含め今日の受講生は60人は居そうだ。
皆、体育館のあちこちで母親と過ごしている。
白のポロシャツに男子は紺色の短パン、女子は同じようなキュロットを履き、騒ぐ事もなく静かに模試の時間が来るのを待っている。
採点をするサンライズの講師も、今日は10名ほど居るのだろうか。
遠くの方には、いつもの体操着ではなくワイシャツにネクタイを締めた関崎の姿もあった。
無意識にみちかは百瀬の姿を探していた。
「百瀬先生居ないね。」
乃亜を見ると、水筒を両手で持ち不安そうな顔をして体育館を見回している。
てっきり他の子供たちに圧倒されていたのかと思っていたけれど乃亜も百瀬を探していたのか、とみちかはほんの少し驚いた。
「そうね。今日はいらっしゃらないのかしら。」
ひどくがっかりした気持ちになりながら、みちかは乃亜から水筒を受け取る。
腕時計を確認すると12時45分だった。
あと15分で模試は始まってしまう。
百瀬は模試よりももっと大事な仕事ができてしまったのだろうか。
みちかは息を吸い込みそっと吐き出すと、乃亜の視線に合わせてしゃがみ込み乃亜の手を取った。
「乃亜ちゃん、確認するわね。先生がお話しを始めたら?」
「静かに先生の目を見てお話しを聞きます。」
みちかは乃亜の目を見つめ、うんうんと頷いた。
「お名前を呼ばれたら?」
「大きな声でお返事をします。」
「お友達と自由に遊ぶお時間になったらどうするんだっけ?」
「1人で遊ばないで、お友達と仲良く一緒に、遊びます。」
みちかが満足そうに微笑むと、乃亜もニコッと笑った。
「頑張ってね。」
大丈夫、乃亜は落ち着いている。
乃亜の肩に手を載せみちかが頷いたその時、乃亜が小さく「あっ…。」と、声を漏らした。
「お待たせ致しました。模擬試験開始10分前になりましたので、受講者の皆さんはこちらにお並びいただきたいと思います。まず1から15までのゼッケンをつけているお子さまから並んで頂きます。こちらのスタッフのところまでお連れください。」
乃亜の視線の先にはマイクを持ち話す百瀬の姿があった。
みちかは立ち上がり、乃亜の手を握りしめる。
みちかは自分の胸が、一気に高鳴るのを感じていた。