恋は等しく
小早川に連れてこれらた場所は、図書室だった。ぼくはこの高校に図書室があることさえ、知らなかった。ぼくは、本を読むほうではないし、漫画をごくたまに読むことはあっても、分厚い小説などを目にするとしたら、それは、教科書の中だけだった。そんなぼくが図書室の存在を知らないのは当たり前のことかもしれない。

閑散とした図書室のテーブルで本を読んでいる彼女が小早川の紹介したい女の子だった。

小早川は彼女に近づいて「真田君を連れてきたよ」と言った。笑顔で。

本から目をそむけて、顔を上げた彼女をぼくは知っていた。

八神いぶき、同じ中学校の生徒で、彼女はとても、有名だった。成績もよくて、人あたりがよくて、美人だった。痩せていて、目の大きな女の子。長い髪はサラサラで輝いているように見える。それにノブユキが好きだった女の子だった。

小早川は、八神に向かって言った。

「わたしはいたほうがいいの、いないほうがいい?」

「どちらでも」と、八神は言った。

「そう、ならわたしは退散するね、またね」と言い、図書室を後にした。

小早川は帰り際に、真田君もまたねと言った。
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