紫陽花とネバーランド
橋のやけに太い手すりに立っていたあたしの体は、踏み出したことによって重力に従って素直に落ちていく。

下を向いて落ちたはずなのに気づいたら上を向いていた。

あ、星がきれい。落ちながら夜空を見る。
暗くて下が見えないおかげで怖さはない。


最近見上げることがなかった空は、馬鹿馬鹿しいぐらいに綺麗だった。


小学生くらいの時、流行った、好きだった曲をふと思い出した。


あたしは、望遠鏡を持っていなかったし、午前2時に友達や恋人と星を見に行くことはなかったけれど、ベランダでその曲を口ずさみながらひとり空を見上げるのが好きだった。


もっとずっと小さい頃はピーターパンにハマっていたっけ。

絵本は常にあたしの近くにあって、短い時間でも読んでもらってたな。

幼いあたしは、ネバーランドに行きたかった。


もうそろそろ川が近いみたいだ。水の音が心地いい。


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