7人目のバンドマン
「志郎くん、ちょっとうちのリーダーの話を和也くんにしてやってよ。」
敬介さんは先程僕に言いかけた話題を志郎さんにバトンタッチする。
「正直俺達もそこまでやってるとは知らなかったが・・
本郷先輩はずっとCycloneの宣伝活動を行ってくれていた。
リハや曲のアレンジを俺達に任せてくれた一方で、
あの人はその間に1人で東京や大阪へ通って、業界関係者のコネクション作りに奔走して・・
メジャーレーベルの担当者と繋がった瞬間、
Cycloneの事を必死にアピールしてくれた。」
「・・・な、なるほど・・。」
「この前和也が来れなかったライブ・・
俺達は知らなかったが、レーベル会社の方々が何人も観に来ていたらしい。
実際に俺達のパフォーマンスを見て、
最終的に契約するか否か・・・
あの日に決まった・・らしい。」
「本郷くんが新曲をあのライブに間に合わせたかった理由も、
“黒い曲”ってアレンジにこだわりを見せたのも、
全てはレーベル会社の人達へのアピールだったってことだね。
・・だったら一言俺達に言ってくれてもよかったのに・・。
まったくうちのリーダーは・・。」
「あ、きっと敬介さんに伝えたら緊張でガチガチになると思ったんじゃないですか?」
図星を突かれたのか、
敬介さんに頭をポンと叩かれた。