7人目のバンドマン
こみ上げてくる涙を我慢できないでいると、
紙袋を手に持つ志郎さんが優しく指で拭ってくれた。
「俺が大学受験、それから大学に通ってた時も使ってた参考書。
使えるか分からないが貰ってくれ。
やりたいことが高校の間に見つからなくても、大人になればなるほど見つかっていくこともある。
まだだいぶ先だが、大学受験頑張れよ。」
「ありがとうございます。
一生懸命勉強も頑張ります。」
「それから・・。」
志郎さんは渡してくれた紙袋の中に手を伸ばし、1冊の大学ノートを取り出した。
「キョウコが生前、
これにサインの練習してたみたいなんだ。
昨日ここに先輩方や敬介、
俺の5人分のサインも一緒に書いた。
これは7人目のメンバーである、
お前に受け取って欲しい。」
「・・・・・。」
「もう泣くな。しんみりした別れはCycloneにふさわしくない。」
「・・はい・・。
志郎さんもお体に気をつけて。」