笑顔だけが可愛い。
「あ!」
「どうしたの?」
「そろそろ行かないと学校に遅刻しちゃいます。咲良」
「ということでお世話になりましたっ」
「ぜひ!連絡してね!」
「…玲、必死すぎ」
ぺこっと頭を下げて彼女たちから見えないところまで勢いよく走る。
だから、この後の会話は聞こえなかった。
「二人とも。咲良ってヤツ、学ラン着てたんだけど」
「あれ?そういえば?」
「男装してたとか?」
「朝から?不審者というか、変態でしょ」
「でもどう見たって女の子じゃない?」
「千晴くんならちょっと髪のばして誤魔化せば女の子に見えるかも!」
「学校でイベントかなんかあったのかな?」
「そうかも!千晴くんは美少年だったけど、それが男装だったら更にレア!」
「その結論でいいの…?」
知らない間に二人とも、性別を間違えられたなんて…
俺はともかく、千晴には気の毒な勘違いをされていた。