Perverse second
「お前に一つ確認しておきたいことがある」



全てを真正面から受け止めるには、はっきりさせておかなければならない事がある。



真っ直ぐな瞳で三崎を見つめると、彷徨いがちだった視線を合わせ、こくりと頷いた。



「今日のことだけど。これをやったのが誰かなんて一目瞭然だ」



「証拠は何もないわ」



「確かに突き出せる証拠はない。でも確信はある」



「……」



確たる事がない以上、固有名詞は出さないけれど、思い描いている人物像は三人とも同じはずだ。



そしてその恐慌のきっかけを作ってしまったのは、間違いなく俺なのだろう。



だとしたら……。



「俺なら何とか出来る。それをお前が望むなら、俺は今すぐお前を守ってやれる」



「柴垣くん…」



だから俺に任せろ。



三崎にそう言うのは簡単な事だ。



けれど俺は敢えてその先を口にはしない。



頼るのも任せるのも甘えるのも、最も三崎が苦手な事だ。



強引に甘えさせる事もできるけれど、今三崎は自分の力で変わってきだしたばかりなのだ。



こんな大きな事態こそ、三崎の気持ちを優先してやらなければ意味がない。




「ありがとう。確かに柴垣くんが出てくれれば収まることもあるのかもしれない」



「じゃあ…」



「でも。その気持ちだけ受け取らせて。営業としても女としても、私がちゃんと自分で解決するから」



帰ってきた言葉は俺の想像していた通りだった。



俺も三崎も、これから自分を確立するために変わらなければならない事を、自分が一番よく分かっているのだ。
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