Perverse second
「そう言うと思ってた」



そう言って笑って見せたが、頬が上手く上がらない。



彼女はそう簡単に人を頼る奴じゃない。



それは分かっていたし、またそんな彼女に惹かれたのだから、安定の答えでもあった。



それでも、ほんの少し寂しく感じてしまったのは、男としてのエゴから来るものだったのだろう。



「女としては落第点だけど、仕事のこととなると全然違うのな、お前って。きっちり向き合って解決しようとするんだからさ」



「…それ…ちゃんと褒めてくれてる?」



本当に我ながら素直じゃない言い回し方だ。



ちゃんと自分を持っている三崎を、津田さんのように褒めてやればいいだけなのに。



どんな時だって、俺の前で女でいてほしいなんて。



どれだけ我儘なんだよ、俺は。



守ってもやれない。



甘やかしてもやれない。



ただの同期というポジションがもどかしくて、このまま強引に自分のモノにしたくなる。



「そこがお前の良いところだよ。そうじゃなければ仕事で毎月きっちりと実績なんて残せねぇもんな」



無理やり仕事の話で気持を紛らわせ、俺は自分に一つの課題を設けた。



「俺ももう一度真剣に仕事に打ち込むよ。絶対誰にも負けないように」



「私も…」



ふわりと笑った三崎は、最後にまたお礼を言ってマンションへと入っていった。



その後姿を眺めながら、俺は俺のやり方で三崎の笑顔を守ろうと心に決めたのだ。
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