Perverse second
翌朝マンションを出た俺は、周囲に三崎の姿を探した。



やはり、というか、案の定というか。



三崎の姿は見つけられなかった。



出社するとデスクに三崎や津田さんはおらず、どうやら席を外しているようだった。



仕方なく給湯室に向かった時、後ろから不愉快な声に呼び止められた。



「柴垣さん、おはようございまぁす」



俺の神経を逆なでするほどに能天気なその声の主は。



振り返るとやはり、無駄に着飾った竹下が不自然なほどににこやかな表情で立っていた。



「竹下……お前……」



今にも掴みかかりそうになるのを必死に堪えながら、ゆっくりと竹下に近づいた。



「お前、何のんきに笑ってんの?」



「笑顔は女の最大の武器ですよ?柴垣さんも笑顔で……ね?」



悪びれる様子など微塵も感じさせないこの女は、いったいどんな神経をしているのだろうか。



「お前を前にして、俺が笑顔でいられると思ってんのか?」



本気でそう思っているなら、この女は腐ってる。



「はいはい、悪ふざけが過ぎました。ちょっとお話しませんか?」



竹下はそう言うと、人気のない非常階段の入り口に俺を誘導した。



三崎は自分で何とかすると言ったけれど、竹下はどうあっても俺を巻き込みたいらしい。



それならそれでいいだろう。



受けて立ってやる。



俺は意気込んで竹下と対峙した。
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