Perverse second
「そんな怖い顔しないでくださいよ。折角の良い顔が台無しです」



竹下はそう言って笑う。



「どうしてあんなことをしたんだ?」



「なんのことですか?」



とぼける竹下の表情が俺の感情を高ぶらせる。



カッと頭に血が上りそうになるのを必死に堪え、俺は低く絞り出すように続けた。



「三崎のパターンや入荷予定表のことだ。あんなことをすれば、三崎だけじゃなく会社や得意先にも大きな損失を与えるってことがわからないのか?」



社会人としての常識を超えている。



これは許されるべきことじゃないのだ。



竹下への怒りを転化するように、拳で壁を叩きつける。



力の加減などしていないのに、全く痛みなど感じない。



「ああ……そのことですか」



ダルそうに溜め息をついた竹下は、信じられない言葉を続けた。



「だから、一番展示会注文数の少ない品番にしてあげたじゃないですか。三崎さんや津田さんが直接私に言いに来ないってことは、結局どうにかなったって事でしょう?」



「そういう問題じゃないだろ!これは社会人として、いや、人間としての資質の問題だ!」



思わず声を荒げてしまったが、竹下は驚くこともしない。



まるでこうなる事が分かっていたかのような、そんな余裕の表情だった。
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