Perverse second
episode 2
「あー、これも出さねぇと…」
デスクの隅に置き忘れていた注文書を見つけて、俺は溜め息をついた。
いくら2年間ここでやっていたとはいえ、そのあと3年間も大阪にいたのでは、なかなかカンを取り戻すのも大変だ。
趣味嗜好も違う得意先に対応すべく、俺は毎日残業していた。
あまり残業ばかりだといい印象を与えないので、ここまでビッチリと根詰めるのは今週までだと決めて取り組む。
残業は必要な時に必要な分だけ。
実際どんなにやったって、効率が上がることはあまりないように思うからだ。
「これだけ書き上げたら帰ろ」
そう呟いて注文書を捲った時。
「あー疲れたぁ…」
誰もいないと思ったのか、帰社した楠原がヨタヨタと入ってきて。
「っんぎゃっ!」
俺を見つけて見事な叫びを披露した。
「お疲れ」
片手を上げて存在をアピールした俺に、
「お疲れ様ぁ。まさか柴垣くんがいると思わなかったわ」
と苦笑いしながら時計を確認する。
「随分と遅かったな」
「そうなの。閉店後に売り場変えるの手伝ってくれたらメインにディスプレイしていいって言うから」
「そりゃおいしい」
「でしょ?クタクタだけどおかげでベスポジで売り場作ってきたわ」
満足そうに笑う楠原の顔は、何だかんだで仕事が好きだと言っている。