Perverse second
「あの時、柴垣くん言たじゃない?結菜は高嶺の花なんかじゃなくて、ただの女だって」



「…ああ」



他の奴がどう思っていたって、本当なら俺には関係ない。



高嶺の花だと思ってもらっていた方が、俺にとっては都合がいいわけだし。



だけど少しでもアイツが自然体でいられるキッカケになれば、それでもいいと思ったから。



ついつい津田さんにも突っかかった言い方になってしまった。



「私もさ、結菜と大学で知り合って、今の結菜は無理してるって解ってたの」



面接の時の自然な二人の笑顔を思い出す。



「いつの間にか周りの人と同じように、無理してる結菜を疑問も持たずに受け入れて、同じように出来る子だって思って見ちゃってたんだなぁって反省した」



「アイツも悪いんだよ。楠原がそう思うのも仕方ない」



「でも柴垣くんはスグに気付いたじゃない」



「いや…俺は…」



三崎に5年以上も片思いして拗らせているなんて気持ち悪すぎる。



絶対言えねぇ…。



「私はずっと結菜と一緒にいたのにさ。3年も離れていた柴垣くんの方が結菜を理解しているみたいで、なんだか悔しかったの」



「………」



そう言って眉を下げて笑う楠原の表情は、悲しげで。



楠原も三崎を大切に思っているのがわかった。



「私、柴垣くんが羨ましいわ。柴垣くんと上原くんって、信頼しあってて言わずともわかるって空気感があるもん」



「…楠原。アイツああ見えて彼女いるぞ」



「バカなの?あんなアホ無理に決まってるでしょ。二度とゴメンだわ。私が言ってるのは二人の関係性のことよっ」



「そっちね…」



陸、お前…楠原に何したんだよ。
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