気持ちいい恋、始めませんか?
身体中の神経が太腿に集中したかのようになる。
でもそれは一瞬で、高遠さんの手が、脇腹から腰を撫で上げるものだから、ゾワゾワが全体へと広がる。


このまま目を閉じて全て感じてしまいたい。


...だけど。



「あ、あの、高遠さん、ちょ、ちょっと待って、ください」


気持ち良さに流されないよう、意識をしっかりもち高遠さんの肩を押す。



「...何?」



不機嫌な声の返事をしながらも、高遠さんは私の肩や、鎖骨に唇を寄せている。


「っも、もう、高遠さん!ストップ!」



思いっきり肩を押して、高遠さんと私の間に距離をつくる。



「だから、何?」


声だけでなく、あからさまな不機嫌な顔に思わず笑いそうになってしまうが、そこはぐっとこらえて。


「私、全部覚えてるんですけど、一つだけ覚えてないんです」



私のセリフに、高遠さんは不機嫌な顔を不可解な顔に変えた。
私の言っていることの意味がわからないのだろう。
けっこうレアな表情だ。


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