Home run[仮]
うちの学校の校則は比較的緩い。
その為か、入学式の為に集まった生徒は明るい髪が多かった。
__1人。私の前に座る男子を除き。
短髪で黒い髪、まだ春なのに少し焼けた肌、
たまにみえる横顔は凄く整っていて、先生方の話を真剣に聞いていた。
真面目だな…
「ねえねえ、梓
あの2組の男の子イケメンじゃない?」
「…えっ?何?ごめん聞いてなかった」
やばい…前の男の子に完全に気を取られて葵の話聞こえなかった。
「だからー、あの2組の男の子イケメンじゃない?」
「どれどれ?あっ、かっこいいね!葵のタイプそう〜」
「だよね!彼女持ちかな?
華の高校生だし彼氏ほしいなー。」
「彼氏か〜、」
「梓はほんっとに美人なのに、部活のことばかりでもったいないことしたよ〜」
「あはは…」
そう、私は中学時代部活のことくらいしか思い出がない。彼氏を作ったことなんて1度もなかった。
「高校は、私だって小説や漫画に出てくるような青春を味わってみたいけど〜」
「前の席の男子と恋に落ちる、とか?
ふたりで2ケツして帰る、とか?」
「きゃー、いいね!それ!」
恋のお話に花が咲いてしまうお年頃、
前の男の子とは対照的に私達は先生の話なんて聞いていなかった。
というか、全校生徒のほとんどは話なんて聞いていなかったと思う。