冷たい花に偽りの太陽を


あたしは早足で来兄の所に向かう。



近づく度、足が自然と止まっていく。



手の震えも治まらない。



あたしは自然と下を向いていた目線を無理矢理上にあげる。



こんなのあたしじゃない。



震えるな。



怖がるな。



気が強くて無表情。



感情なんて持たない。



それがあたしでしょ?



あたしは足を動かす。



ドクドクと心臓が早く脈を打つ。



でもそんなの気にしない。



来兄に、気づかれちゃいけない。



絶対来兄はまた、悲しそうな表情をする。



そんな顔させない。



「…来兄」



あたしが声をかけると、来兄は下に向いていた目線をあたしに合わせた。



「…ちゃんと渡せたか?」



「うん」



来兄はゆっくりと立ち上がった。



「バス停まで送ってく」



「大丈夫だよ」



あたしは首を降るけど、来兄は「行くよ」と言って歩き出す。



来兄の数歩後ろをただ無言で歩く。



来兄はあたしに合わせてゆっくり歩いてくれていた。



バス停の前で来兄が止まる。



「…次のバスあと5分だって。」



あたしは小さく頷いた。

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