冷たい花に偽りの太陽を
「おはよう愛夢」
「…おはよ」
朝、やっぱり慧はいつものコンビニにいた。
そしてやっぱり今日も、1人で楽しそうに話している。
「─────それでね、紘が……」
昨日はまさか来兄に会うとは思わなかった。
来兄のこと、やっぱり傷つけちゃったかな。
来ないでとしか言えない自分が嫌い。
あの日までは、すごく仲良かったのに。
日常を壊したのはあたし。
もう取り戻せない日常。
たとえそれが、周りから見て歪んでいたとしても。
あたしにはそれが全てだった。
いつの間にか教室についていて、あたしが席に座ると心織が勢いよく振り返る。
「あむちんおはよ!!」
あたしってあむちんで定着してる感じ?
「…………おはよう」
「昨日はあむちんいないから寂しかった〜」
心織は泣き真似をしながらあたしを見る。
あたしになんて言って欲しいのかわからない。
「昨日はどこ行ってたの?」
「………墓参り」
「そうだったんだ…。あ、昨日のノート見る??」
心織はあたしにノートを見せる。
そもそも授業をほとんど受けてないからノートとか要らないんだけど。
「あたし授業受けないからいいよ」
そっか、と心織は言いながらしゅんとした。
こんな時、なんて言えばいいのかわからない。
あたしは他の人と比べて欠落してる。
それは自覚してるけど、自分でどうにかなるものでは無い。
HRが終わると、あたしは直ぐにリュックを持って席を立った。
心織が何か言いたそうな顔をしてたけど、あたしはわざと目を逸らした。
前に心織は、あたしと心織が似てるって言ったけど、全然違う。
なにかが決定的に違うんだ。
そのなにかが分からないけれど。
あたしは心織に止められる前に教室を出た。