冷たい花に偽りの太陽を
「…愛夢、顔色悪いよ。大丈夫?」
慧があたしの顔を覗き込む。
「…平気」
あたしは慧から目を逸らした。
『お前が───』
脳内で繰り返されるあの言葉。
震える手をぎゅっと握りしめた。
「……今日は家まで送るよ」
そう言って慧はバイクに跨った。
「コンビニでいい」
あたしがそう言うと、慧はあたしの方を見る。
「そんな真っ青な顔してる愛夢を、コンビニになんて置いていけない。」
慧はいつもより真剣だった。
でも、家には来て欲しくない。
家がバレたらそれこそ自由がなくなる。
今よりずっと。
「いい。平気だから。」
「…じゃあコンビニまで親御さんに迎えに来てもらう?」
「無理。親なんて、もうずっと居ないし。」
あんな人達、親だなんて思ったこともないけれど。
それでも名目上親だったあの人達は、あたしだけを嫌っていた。
あたしが器用じゃなかったから。
あたしが完璧じゃなかったから。
「…親がいない…?」
慧のその呟くようなその声に、あたしははっと我に返る。
あたしはなにを言ってるんだろう。
こんなこと言ったって、慧を困らせるだけなのに。
「…なんでもない。気にしないで。」
気にしないなんて、無理な話だけど。
あたしはなにか聞かれる前に慧の後ろに跨った。
狡いとは思うけれど、聞かれても困る。
まだ話したくない。
彼を信用したわけじゃないから。
信用する気もないけれど。