冷たい花に偽りの太陽を
あたしに何も言わず、慧はバイクを動かした。
『お前が───』
脳内でリピートされるその言葉を無くしたくて、あたしは固く目を瞑った。
しばらくして、慧に名前を呼ばれた。
目を開けるとそこは倉庫の前だった。
「……なんで」
「今日は倉庫に泊まっていきなよ」
慧はバイクから降りると、あたしのヘルメットを取った。
そしてあたしを抱き上げた。
「………帰る」
「だーめ。」
慧はあたしを抱き上げたまま倉庫に入っていく。
「慧さん!おかえりなさい!」
下っ端の子達が次々と挨拶をしていく。
「ただいま〜。…あ、凛(りん)悪いんだけど俺のバイク片しといてもらえる?」
「分かりました!」
凛、と呼ばれた子は、威勢のいい返事をして倉庫の外へ走って行った。
「…ねえ愛夢」
「…」
「…愛夢には、なにがあったの?」
ドクンと心臓が大きく脈打つ。
あたしは慧の肩に顔を埋めて、口を開いた。
「……慧には関係ない」
「………そっか」
慧はそれだけ言うと、何も言わなくなった。
慧は幹部室の前でゆっくりとあたしを降ろした。
幹部室のドアを開けると、そこにはみんながいた。
「愛夢ちゃん!ごめんね〜!」
紘が駆け寄ってくる。
顔の前で手を合し、あたしに謝ってくる紘。
本当は、全く悪いだなんて思ってないくせに。
「…別に」
あたしは紘の横を通り過ぎ、友樹の横に座った。