冷たい花に偽りの太陽を
「おはよう愛夢!」
いつものコンビニに、何故か慧がいた。
あたしは一瞬足を止めてから、直ぐに歩き始める。
慧はあたしの横に並ぶと、また昨日までのように話し始めた。
なんで慧がここにいるの。
「……関わらないでって言ったよね。」
あたしは地面を見ながらそう呟いた。
「不良と関わるなって言われたんでしょ?なら大丈夫!ほら、俺って不良に見えないし!」
小さくて誰にも聞こえないと思っていたあたしの声は、どうやら慧の鼓膜を揺らしたらしい。
そして慧は、そんなことを言ってくる。
確かに慧はこの進学校に主席で通い、不良にはあまり見えない身なりをしている。
髪は少し茶色いけど。
それでも黒に近い茶色だから、地毛だと言われればそう見えないことも無い。
雰囲気も柔らかく、ニコニコしている慧を見て、きっと誰1人として暴走族の総長をやっていると思う人はいないだろう。
それでも、慧は不良だ。
白帝という暴走族の総長で、少なからず喧嘩もしている。
事実、あたしが慧に初めて会った時、慧は敵チームと喧嘩していた。
何も知らない人から見て不良じゃなくても、慧は間違いなく不良で。
不良と関わるなと言われた以上、あたしに慧と関わる権利はない。
「見えないから、バレないからって関わっていいわけない。慧は不良。その事実がある限り、あたしは慧とは関わらない。」
あたしがそう言ったあと、慧は何も話さなくなった。