冷たい花に偽りの太陽を
「……………誰」
いつもの空き教室の窓から入ろうとしたあたしは、窓枠に手をかけた状態で動きを止めた。
揺れたカーテンの隙間から、女子生徒の足が見えた。
それも中にいるのはひとりじゃない。
シャッとカーテンが開けられ、目の前にケバい女の人が立った。
…………いや、ほんとに誰。
え、まさかの初対面?
てっきりクラスの人かと。
誰だっけ。あの、あたしがゴミかけた人。
マリカ?ユミカ?3文字だったのは覚えてるんだけどなあ。
って、クラスの人はどうでもいい。
この人達は誰なの。
ふと上履きを見ると、3年生の学年カラーだった。
え、3年?
なんで3年?
あたしなんかしたっけ。
いやいや、するわけない。
だってあたし、授業すら受けてない。
「あんた、慧様とどういう関係なのよ」
………また慧絡み?
というか慧“様”って。
「……何もないですけど。」
「はあ!?何もなくて一緒に登下校するわけないじゃない!!」
………たしかに。
でもまさかここで、慧とあたしは暴走族の一員なんです、なんて言えないし。
めんどくさ。
ここは適当に嘘でもついておくか。
慧だって頭は良いだろうから、話し合わせてくれるでしょ。
「……慧は昔近所に住んでて、お兄ちゃんみたいな存在なんです。」
「…幼馴染みってこと?」
「………幼馴染み、なんですかね。」
「……お兄ちゃんみたいな存在ってことは、あんたにとっても慧様にとっても恋愛対象じゃないってこと?」
「………………慧はあどう思ってるか知らないですけど、あたしは恋愛対象じゃないですよ。」
だいたい恋愛なんてしたくないし。
できるとも思ってないし。
「……そう。それならいいわ。もしこれが嘘だった時は覚悟しておいて。」
話のわかる人でよかった。
ケバい先輩たちは全員窓から出ていった。
あたしはため息をこぼして、今度こそは空き教室の中入った。