冷たい花に偽りの太陽を


「...あむちん!お昼にしよう!」



心織は元気よくそう言って、パン、と手を叩いた。



お昼...。



もうお昼だったんだ...。



「あむちん?お昼にしよ?」



心織が顔を覗き込む。



心織はお弁当を持っていた。



心織のお母さんが作ってくれたのかな。



羨ましい、なんて。



今更なにを思っているんだろう。



壊したのはあたしなのに。



「.....お昼、持ってきてない。」



あたしの言葉に心織は目を見開く。



「え、持ってきてないの...!!じゃあ購買行こう!」



心織はすぐに立ち上がった。



購買なんてあったんだ。



初めて知った。



「あむちん?行こ?」



心織は不思議そうに首を傾げる。



お昼ご飯は食べるのが普通だもんね。



でもあたしは普通じゃない、から。



「...お昼要らないから。」



「.....え!?なんで...!?.........はっ!まさかそんな細いのにダイエット中!?」



ダイエットって...。



あたし絶対ダイエット必要ないんだけど。



ご飯食べてないから今にも折れそうなくらい肉ついてないし。



学校の身体測定だといつも痩せすぎで、たまに保健室に呼び出されたりするのに。



というか、栄養失調で倒れる人がダイエットなわけないでしょう。



「.....ダイエットじゃない。お腹空いてないから。」



「...朝ごはんいっぱい食べたの??」



朝ごはん、食べたっけ...?



確か食べてないような気がする...。



興味ないから忘れた。



「.....たぶん食べてない。」



「ええ!?朝ごはん食べてないのにお昼も食べないつもり!?ダメだよ食べなきゃ!!」



心織って本当に慧と似てる。



心織は素直なだけだけど。



きっと慧は全てを隠しているから。



本当はあたしの事なんてどうでもいいはずなのに、表面上心配をしている。



それが慧。



「購買行くよ!!」



心織はあたしの手を取った。



心織は何故か頬をふくらませていて。



あたしには心織が怒る意味がわからない。



心織はなにを言っても効かなそうだから、財布を持って渋々立ち上がる。



立ち上がったあたしを見て花が咲いたように笑顔になった心織は、あたしの手を掴んだまま歩き出した。

< 140 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop