冷たい花に偽りの太陽を


「あむちん美味しい?」



心織はお弁当を膝の上に広げて、首をこてんと傾げながらあたしを見る。



その仕草、どこで覚えたの。



こんなん男にやったらイチコロだよ。



あたしは女だし、まして感情もないからなんとも思わないけど。



ていうかこれ、女子にも危険かも。



普通の女の子でも、かわいいっ!って抱きついてきたりするんじゃない?



心織の周りには危険しかない。



「.......美味しいんじゃない?」



あたしにはよく分からないけど。



「え、なんで疑問形!?」



心織は、あむちん面白いね、とくすくす笑う。



面白いなんて初めて言われた。



どちらかといえば、つまんないとしか言われなかったから。



まああたし、表情変わらないし。



基本話さないし。



いじめられても無反応だし。



そりゃつまんないよね。



そんなあたしを面白いなんて言う心織ってやっぱり変だ。



サンドイッチを食べ終え、お弁当を食べる心織を眺めていると、コンコンとドアがノックされた。



前もこんなことあったっけ。



あの時は心織で、ドアを開けた瞬間に飛びつかれて、耐えられなかったあたしはそのまま床に倒れた。



最近のことなのに、どこか昔に感じる。



心織はドアとあたしを交互に見た。



開けたいけど開けたらあたしに怒られる、とか考えていそう。



あたしはため息をひとつこぼして立ち上がった。



ドアの前に立つ。



向こう側にいるのが誰か分からない以上、開けるわけにはいかない。

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