冷たい花に偽りの太陽を
家まであと5分。
そこまで来て、あたしは家とは違う方向に歩く向きを変えた。
正直家は好きじゃない。
誰もいないあの家に、なんにも思い出はないけれど、“家”というものがあたしは嫌いだ。
家族が嫌いだ。
だからあたしは極力家にいないようにしている。
あたしの記憶上の家と家族に、いいものはない。
もちろん学校にも────いや、いい思い出というものがない。
いい思い出がひとつでもあったなら、あたしは何か変わっていたのだろうか。
繁華街やショッピングセンターで時間を潰す。
これなら保健室にでも行って寝ていればよかった。
明日は視聴覚室で寝よう。
あたしは家の近くの公園に行った。
もう日が沈んだ公園に、子どもの姿はなかった。
ここで遊んでいる子供たちはみんな、大好きな家族と大好きな家で暮らしているのだろう。
あたしにはなかったものだ。
昔は羨ましいと思っていた。
でも今はもうなんとも思わない。
だってどうせもう、あたしに家族なんていないのだから。