冷たい花に偽りの太陽を
「今日こそ潰してやるぞ橘田ぁぁぁ!!」
橘田慧に向かって、馬鹿みたいに大声で一人の男が叫ぶ。
10人以上いる、橘田慧の敵であろう男達の先頭に、叫んだ男が立っていた。
おそらくあの男がリーダーなのだろう。
「毎回同じこと言ってるよなぁお前ら。いつになったら俺に勝てるようになるわけ?」
え、橘田慧ってこんなだったっけ?
さっきまでの、男にしては高い声で話しかけてきた橘田慧は、もうそこにはいなかった。
低い声で、相手に話しかける。
空気が張り詰めた。
そんな橘田慧に、リーダー格の男が少し怯んだ。
「お前ら弱すぎて喧嘩してもつまんねぇんだよな。早く諦めてくんね?」
橘田慧の目が鋭くなる。
怖い。
あの時の彼と同じ目をしてる。
ううん、彼はもういない。
彼なわけない。
彼なわけないのに、彼と橘田慧が被って見える。