冷たい花に偽りの太陽を



「名前呼ぶから返事しろー。入学式でも呼ぶから、読み間違えてたりイントネーション違ったりしたら言ってくれ」



少し緩そうな担任は、そう言って点呼を取り始めた。



呼ばれていく名前に、みんなは「はーい」と返事をする。



スムーズに点呼が進んだのは、5人目くらいまでだった。



「なんだこの漢字...。金子...真愛(まい)...?」



「“あい”です〜」



6人目、早くも先生は名前を読み間違えた。



まあ確かに読みにくい漢字の人多いけど。



「金井陽(かない よう)」



「はるっすよー」



7人目も読み間違えた。



その後も先生は名前を読み間違えていく。



唯愛(ゆあ)をゆいって読んだり、香乃羽(このは)をかのはって読んだり。



そして先生は、16人目であるあたしの名前も読み間違えた。



「住吉.......あいむ?あゆめ?」



うん。少しは予想してたよ。



読み間違えるかなー、なんて。



でもさ、愛夢(あむ)ってそこまで難しくなくない?



あたしは目立ちたくないのに。



「...あむ、です。」



あたしは無表情のまま、そう言った。



先生はそんなあたしを見て怒っていると思ったのか、「あむな。ごめんごめん」なんて謝ってきた。



別に怒ってないんだけど。



まあいいか。



一通り点呼が終わると、先生は入学式について説明を始めた。

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