冷たい花に偽りの太陽を
悲鳴というか、歓声というか...。
これ、朝と同じだ。
てことは慧?
「愛夢」
名前を呼ばれドアの方に目を向ければ、案の定慧がいた。
あたしはそれを見て、無言で席を立ちリュックを背負った。
慧の所にあたしが着くと、すぐに歩き出した。
周りの視線が今までにないくらい鋭くて、少し手が震えた。
まるであの人たちのようで。
最近昔のことを思い出す機会が多い気がする。
早く忘れ去りたいのに。
また溜息をひとつこぼした。
「...む、...あ......愛夢!」
「!...なに?」
「いや、なにっていうか、バイク...」
そう言われて前を見れば、昨日乗った慧のバイクがあった。
朝は歩きじゃなかったっけ?
そう思って周りを見ると、既に家の近くにまで来ていたことに気がついた。
あたしいつの間にこんなに歩いてたの?
無意識に歩くって、あたしの頭おかしすぎるでしょ。
「...いつもここまでバイクできて、このパーキングに停めてるんだ」
なるほど。
だからコンビニにいた時はバイクじゃなかったんだ。
納得。
...ってそうじゃなくて。
早くヘルメットかぶってバイク乗らないと。
これ以上他人に迷惑なんてかけられない。
あたしは生きてるだけで迷惑なのに。
「ね、ぼくこれほしい!かってよおかあさん!」
“おかあさん”
その言葉に肩がビクッと上がる。
カタカタと震える体と痛み出す頭。
「...っ」
目の前の世界がぐにゃりと歪む。
足に力が入らなくなって前に倒れていく。
でも自分にはどうすることも出来ない。
「愛夢!?」
あたしの体が地面に着く前に、慧に支えられた。
嫌だ。戻りたくない。
やだ、やめて。
これ以上思い出したくない。
やめてやめてやめてやめて。
頭の痛みは治まるどころか酷くなっていく。
めまいも酷くなって、もう自分では立っていられない。
「愛夢、どうしたの!?大丈夫?愛夢?」
「...け、い...」
ごめん、もう無理だ。
結局あたしは他人に迷惑をかけて生きていく。
迷惑ばっかり。
もう迷惑なんてかけたくないと思ってたのに。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
あたしは頭の痛みを抱えながら、意識を失った。