冷たい花に偽りの太陽を
「...なんかあった?」
慧はあたしに問いかける。
慧はあたしの顔を覗き込んでくるけれど、あたしは慧とは目を合わせない。
慧に限らず、あたしは人と目を合わせることがあまり好きじゃない。
全てを見透かされているような気分になるから。
「別になんもないけど」
そしてあたしは、また人との間に壁を作った。
こうやって作った壁は簡単には崩れない。
いつだって、相手との間に線を引き壁を作り、そうして自分が傷つくことを避けてきた。
あたしは自分のことしか考えてない、自己中的な奴で、利己心の塊だ。
慧はそっか、とだけ返してそのあとは何も言わなかった。
ほら、慧だって同じでしょう?
壁を壊そうとしない。
線を越えようとしない。
その壁や線を引いたのは紛れもないあたし。
慧はあたしのことを教室まで送り届けると、いつもの様にどこかに歩いていった。
多分屋上にでも行ってるんだと思うけど。