冷たい花に偽りの太陽を


「...本心だよ。あたしは静かに過ごしたいの。だから心織とは関わりたくない。」



心織は悲しそうな顔をする。



それでも、あたしを見て優しく微笑んだ。



「愛夢はさ、優しいよね」



「...は?」



思わず声が漏れた。



だってあたしが優しい?



そんなことありえない。



いつだって自分のことしか考えてない。



自分が1番傷つかない道を選んで歩いてきた。



人と関わることで傷つくなら、関わらない道を。



助けを求めることで傷つくなら、誰にも助けを求めない道を。



感情を持つことで傷つくなら、感情なんて持たない道を。



本当の自分を見られることで傷つくなら、作った自分だけを他人に見せる道を。



そうやって、自分が傷つかない道を探してきた。



たとえそれが間違った道だとしても迷わない。



だってそれがあたしを守る唯一の術だから。



そんなあたしが優しいわけがない。



「愛夢ってさ、人と関わるの嫌いでしょ?だって最初に話した時、すっごい冷たかったもん。自己紹介も、関わってくんな!ってオーラ出てたし。」



クスクスと心織が笑う。



「なんで分かってたのに話しかけてきたの」



分かっていたなら話しかけてこなければよかったのに。



そうすればあたしはもっと静かに過ごせた。



そうすれば心織はもっと良い友達が出来た。



そうでしょう?



「んーなんで、かぁ...。」



心織は天井を見上げて小さな声で呟いた。



「...あたしも、前まで愛夢と同じだったからかな」



心織が、あたしと同じ?



どういうこと?



だって心織は元気で明るくて愛想が良くて。



あたしとは正反対だ。



それなのに、“あたしと同じ”だった?



そんなわけない。



そんなわけ、ないのに。



歯を見せて笑った心織の瞳から、涙が溢れそうになっていて、あたしは何も言えなくなった。



「...私、小学5年生から中学2年生の夏までいじめられてたの」



心織が虐めれてた?



心織はいじめられるタイプじゃない。



あたしとは全然違うのにどうして。



「昔はね、自分の意思なんて全く言えなかったの。暗くて、いつも1人だった。」



今の心織とは真逆だ。



だから信じ難いけれど、心織の表情を見ると本当のことなんだと思える。



だって、涙を堪えているから。



今にも溢れそうな涙を必死で堪えている心織が嘘をついているようには見えない。



「もう人と関わりたくなくてさ。中学に入学した時は、何もなく静かに過ごせればそれでいいと思ってた。

でもね、結局中学って、学校変わっても生徒は小学校とあまり変わらないでしょ?他の小学校と一緒になるだけだから。.....だから、終わると思ってたいじめは終わらなかった。」



心織の声が震える。



瞳から1粒の涙がこぼれ落ちた。

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