冷たい花に偽りの太陽を
こんな暗い空気になっちゃってごめんね。
折角の誕生日なのに。
今日はお兄ちゃんが20歳になった、特別な日だから明るくしてようって思ってたんだけど。
ここにくるとやっぱり暗くなっちゃうみたい。
...あ、そうそう。
あのね、あたしお兄ちゃんに誕生日プレゼント買ってきたんだよ。
あたしはそっと目を開けた。
バックの中からラッピングされた小さな箱を取り出す。
その箱を開けようとした瞬間。
「あ、む...?」
ピタッと手が止まる。
そしてカタカタと震え出す。
もう、どうして。
だって今まで1度も、誕生日当日にここには来なかったのに。
「愛夢、だよな...?」
肩に手を乗せられた瞬間、あたしは駆け出した。
墓地から少し走ったところで、あたしは段差につまづいて転んだ。
立ち上がろうとしたけれど、震えているせいか、力が入らない。
擦りむいた膝から滲む血に、あたしの心臓がドクンと不自然に脈を打つ。
「愛夢!!」
後ろから聞こえたその声に、あたしの体の震えが増す。
ごめんなさい。
そう、言えたなら。
やめて。来ないで。
そう、言ってしまったから。
「大丈夫か!?」
あたしの前に膝をつき、顔を覗き込んできた彼に、あたしは昔お兄ちゃんに言ったのと同じ言葉をぶつけてしまう。
「あ...や、やめ、て...こないで...っ」
結局あたしは、昔のままだった。
何一つ変われていない。
変わりたかった。
変われなかった。
あたしは結局あたしのままで。
だからあたしに対する周りの態度も昔のまま。
「ごめんな、愛夢...」
傷ついたような顔をする彼に、小さく首をふる。
違うの。
あなたは悪くない。
全部全部あたしが悪いの。
立ち上がった彼が、どこかに歩いていく。
そう、そうだよ。
それでいいの。
あたしなんかいないと思って。
あたしのことなんて、忘れてよ。
そう思うのに、胸が締め付けられるのはどうして────?