冷たい花に偽りの太陽を
「愛夢!!」
墓地から出て少ししたところで、座り込んでいる愛夢を見つけた。
「大丈夫か!?」
すぐに愛夢の前に膝をつき、顔を覗き込む。
転んだのか、愛夢の膝に血が滲んでいた。
愛夢は俺を見て怯えた表情をする。
「あ…や、やめ、て…こないで…っ」
愛夢が震えながら言った言葉に、俺は酷くショックを受けた。
俺が悲しむ権利なんてないのに。
あの日俺が言った言葉は、愛夢のことを深く傷つけた。
今の俺とは比じゃないくらいに。
そしてそれは、今も尚愛夢の心に深い傷痕を残している。
「ごめんな、愛夢…」
両親から守ってやれなくてごめん。
あの日、1番傷ついていた愛夢を責めてごめん。
なにひとつ愛夢は悪くなかったのに。
結局俺は、愛夢を守るどころか傷つけてばっかりだ。
今も昔も変わらない。
変わりたかった。
愛夢を守れるようになりたかった。
でも、変われなかった。
結局愛夢は俺を恐怖の対象としている。
小さく首を振る愛夢に、俺はどうしようもなく泣きたくなって立ち上がった。
泣いていいのは俺じゃない。
ここで傷ついていていいのも俺じゃない。
とりあえず今は、愛夢を落ち着かせることが最優先だ。
俺は愛夢に背を向けて歩く。
確かもう少し行ったところに自販機があったはずだ。
思った通り、すぐに自販機があった。
お金を入れて、愛夢が昔好きだった温かいミルクティーを買う。
そしてすぐに愛夢の元に戻った。
「愛夢、ゆっくり息を吐け。息を吐くことに集中するんだ。」
本当は背中をさすってやりたいけど、愛夢には触れない。
元はといえば俺が原因だから。
少しずつ落ち着いてきた愛夢に、安堵の息をこぼす。
さっき買ったミルクティーを、キャップを開けてから差し出す。
愛夢は困惑していた。
「ミルクティー好きだったろ?」
愛夢はまだ小刻みに震える手で、ミルクティーを持った。