この世界にきみさえいれば、それでよかった。
そんな私のぐちゃぐちゃな顔を見て、ヒロは何度も大きな手のひらで涙を拭いてくれた。
「こうやって感情のまま泣くのは人間だけだって知ってた?」
「え……?」
「でもなんで泣くのかはまだ医学的には解明されてないんだと」
そんなの初耳だ。でもヒロがそんなことを知っていることにビックリ。だって涙について調べない限り、普通はあまり分からないことだから。
「ヒロも泣いたりするの?」
「泣かねーよ。男だし」
うん。私もヒロが泣いてる姿なんて想像できない。
でも、もし涙の理由についてヒロが自分で調べたのなら、きっと泣いて泣いても溢れてくるワケを知りたかったからなんじゃないかって。
やっぱり、そんなヒロの姿なんて頭には浮かんでこないけれど、もし、そんなヒロもいるのなら……。
「じゃあ、泣きたくなったら、私の前では泣いてくれる?」
そう尋ねると、ヒロは笑った。
それが肯定か否定かは分からなかったけど、いつもヒーローみたいに強いきみの弱さに、私はいつか触れてみたい。