この世界にきみさえいれば、それでよかった。
*
それから数日が経って、カレンダーは8月になっていた。
お風呂上がりのヒロのスマホに電話がかかってきて、私は邪魔にならないように使っていたドライヤーのスイッチを止める。
「なに?」
ヒロはぶっきらぼうに電話に出た。対応の仕方からして奏介くんかなって思ったけど、奏介くんは仕事が忙しくて暫く遊びにいけないって嘆いていた気が……。
10分ほどで電話は終わり、ヒロは面倒くさそうにため息をついている。
「どうしたの?」
「んー姉貴から」
定期的に栄養のある食事をヒロに送り、おまけにめちゃくちゃ美人のお姉さん。ヒロも美形だし姉弟揃ってなんて本当にどんな遺伝子をしてるんだろう。
「な、なんだって?」
あんまり詮索しちゃいけない気もするけど、なんだか世間話をしていた雰囲気でもなかったから。