この世界にきみさえいれば、それでよかった。
「ごめんなさい……」
「はは、平気平気。じゃあ、もう一回ね」
失敗を繰り返す私を叱りもしないで、美幸さんは丁寧に教えてくれた。
三回目でやっと焼きそばの形にはなったけど、試しに美幸さんが食べたら「うん。べちゃべちゃだね」と言われて、また失敗。
……ああ、私ってなんでこんなに不器用なんだろうか。
ひとりで落ち込みそうになっていると、美幸さんが強めに私の背中を叩いた。
「ほら、そんな暗い顔しないの。失敗してもいいって言ったでしょ?ゆっくりでいいからサユちゃんのペースでやってみてごらん」
やっぱり美幸さんはヒロのお姉さんだな……。下を向いている私を優しく激励してくれる。
私はめげずにもう一回、もう一回と作って、6回目にしてようやく水分を飛ばすコツが掴めてきて試食してもらうと「うん、美味しい!」と美幸さんからオッケーがでた。
ホッとしたのもつかの間に注文が入って、今度は私が作ったものをお客さんに出した。
「鉄板の前って暑いでしょう?」
「暑いけど、楽しいです」
なにかを新しく覚えるということ。失敗を重ねて認めてもらえること。暑いなんていってられないぐらい私はワクワクしている。