この世界にきみさえいれば、それでよかった。


それから時間はお昼どきになり、お店は座る席がないほどお客さんがひっきりなしに来た。

やっぱり定番の焼きそばは注文する人が多くて、作ってはまた作りの繰り返し。でもそのおかげでずいぶん上達して、得意料理が焼きそばになりそうなぐらい。


「サユちゃん、野菜まだ足りる?」

「あ、キャベツがヤバいかもです」

「オッケー。すぐに切って持ってくるね」


なんか働いて汗を流すのって気持ちがいい。みんなで一致団結しているような気になって、焼きそばも何皿でも作れちゃいそう。


「あれ、可愛い子がいる」

そう思った矢先に、鉄板の前にふたつの影。顔を上げると、そこには海ぱん姿の男の人が立っていた。


「もしかして女子高生?」

「焼きそばふたつ作ってよ」


たぶん大学生かもう少し上。肌はこんがりと小麦色に焼けていて、どうみても軽そうな感じ。

私をなめ回すように見てくる視線が気持ち悪くて、心臓が一気に速くなる。それでも他の人たちは忙しそうだし、迷惑はかけられないと、私は声を絞り出した。

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