この世界にきみさえいれば、それでよかった。
Episode:5 涙の温もり
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「すいません。先にシャワー借りちゃって」
海の家のバイトは海の遊泳時間である5時に合わせて終わった。
それからお店の片付けをみんなでやったあと、日給のお金を茶封筒で美幸さんに手渡されて、私は給料そのものが初めてだったから感激していると……。
『ねえ、サユちゃん。今日うちに泊まらない?』
そう誘われて、こうして現在。美幸さんの家のお風呂まで使わせてもらったのだ。
「いいのよ。焼きそばの油で身体がギトギトだったでしょ?それより今日は本当に助かっちゃった。ありがとうね」
「いえ、こちらこそ楽しかったです!」
でも、まさか美幸さんに家に泊まることになるなんて思ってなかったけど。
美幸さんの自宅は海から車で30分ほどの場所にあって、おしゃれな平屋の一軒家。
目まぐるしく仕事が始まってしまったから美幸さんについての情報はなかったけれど、美幸さんは結婚していて、お腹には6か月になる赤ちゃんがいるそうだ。
仕事の時はエプロンをしていたから分からなかったけど、今は少しふっくらとしたお腹が確認できる。