この世界にきみさえいれば、それでよかった。
「中学3年の時にね、卒業したら俺は働く、一人暮らしするから保証人にだけなってくれって私に頭を下げてきたの」
「………」
「私も今は専業主婦になっちゃったけど、当時は正社員で働いてたし、一応ヒロの保護者としては成立しててね。でも保証人になる代わりに高校だけはちゃんと行きなさいって頼んだんだよね。ヒロは真面目に学校に行ってる?」
「行ってると思います」
これも私が知ってる範囲のことだけど、しっかり進級してるということはテストや出席日数をクリアしなきゃいけないわけで。
金髪でバイク通学と、校則に違反することばかりをしてるけど、ヒロの家にはちゃんと晴丘の制服がしわにならないようにハンガーにかけられている。
「でも本当は、保証人はお父さんの名前になってるの。ヒロには内緒ね。どっちも頑固だからそういう男が家族がいると気を遣ってしょうがないよ」と、美幸さんは困ったように笑った。