この世界にきみさえいれば、それでよかった。


もしかしたら自分から頼めないヒロの代わりに美幸さんが裏でご両親にお願いしたのかもしれない。


「なのにバイトで稼いだお金はほとんど実家に仕送りしてるみたいだし、ヒロもヒロなりに両親の気持ちは分かってると思うけど、それでも消化しきれない部分がずっと消えないままなのね」


最後の言葉は私にというより、ソファーで寝ているヒロに向けて美幸さんは言っていた。


ヒロの消化しきれない部分とは、一体なんだろう。

とても暖かそうな家族なのに、どうしてヒロはそんなにも早く家を出たかったのかな。

自立したかった?大人になりたかった?

その答えはたぶん、ヒロにしか分からない。


私がそんなことを考えてる中、美幸さんが急にお母さんの顔つきになりながら自分のお腹を優しく撫ではじめた。


「だけど私もその血を引き継いでるから、きっとこの子もヒロみたいな性格に育っちゃうと思うけど」

「男の子なんですか?」

「うん。あ、これも内緒ね。旦那にもまだ言ってないことだから」


……そっか。男の子なんだ。ヒロみたいな子だったら手は焼くかもしれないけど、きっときっと優しい子に育つはず。

無事に産まれたら抱っこさせてほしいな。

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