この世界にきみさえいれば、それでよかった。



黙って出ていくなんて非常識だとは思ったけど、ヒロに直接言える自信がなかったし、顔を見たらまた甘えてしまうと思ったから、ヒロが出掛けたあとに荷物をまとめようと思ってた。

それで直接言えないぶんメールでお礼を綴って送ろうなんて考えていたのに……。


この慌ただしくない朝は、まるで休日のヒロみたい。



「さっきシフト代わってもらった」

「え……?」

「だから今日はまる1日休み」


バイト三昧のヒロがシフトを代わったのは初めてだ。その理由はなんとなく、想像がついている。


「私のせい……?」


ヒロは至って普通だけど、昨夜の私の様子を見て少なからず動揺はしたはず。


私にとって悪夢にうなされることも、ああやって呼吸が苦しくなることもよくあることだったけれど、ヒロにとってはよくあることじゃないから、そんな私をひとりで家に置いておけないと判断したのかもしれない。


やっぱり私はヒロに迷惑しかかけてない。

弱くて、脆くて、自分が情けないよ、本当に……。

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