この世界にきみさえいれば、それでよかった。
「お前、サユになにしようとした?」
ギシギシと骨の歪みが聞こえてくるぐらいさらにヒロは力を入れた。
「……っ。な、なんだよ、お前!」
その力から逃げるように男がヒロから離れる。
握られた手を痛そうに振りながら真っ赤な顔をしてる男。
こんな顔、見たことない。
だって、こいつは私よりも上だった。力も立場も勝てなくて、いつも弱い私をいたぶって楽しそうにしてて。
逆らえない、抗えない状況で、男が何度優越感に浸ったかは分からない。
そのぐらい男は絶対的な強さだと思ってたから、力負けする姿なんて想像もしたことはなかった。
「はは……。お前まさかサユの彼氏か?」
「あ?つかなんで名前で呼んでんの?」
私はまだ立つことができなくて、震えもおさまらない。
この男と私の関係をヒロには知られたくない。なのに、男の口は私の気持ちとは裏腹にペラペラと動く。
「俺はこいつを父親だよ」
ヒロには言わないで。
「彼氏なら当然知ってんだろ?こいつの身体中のアレ」
「……アレ?」
お願い、やめて。
「彼氏なのに知らねーの?じゃあ、サユ見せてやれよ。俺がたくさんつけたしつけの印……」
「……やめてっ!!」
私は周りに響くくらい大きな声を出した。