この世界にきみさえいれば、それでよかった。
*
次の日。無事に登校日が過ぎて、また普段どおりの夏休みが帰ってきた。
部屋で繰り返されるアラームの音。これはいつもヒロが設定してるもので、寝起きのいいヒロはすぐにむくっと目を覚ます。
だけど今日は解除されるどころかずっと永遠に鳴ってるから、私のほうが先に目覚めた。
「ヒロ、時間だよー」
そう言ってベッドの下で寝ているヒロに声をかける。
朝寝坊することなんてないヒロがアラームで起きないなんて珍しい。
「ヒロ?」
横になっているヒロはピクリとも動かなくて、寝ぼけまなこだった私の頭が急に覚めてくる。
「え……ヒ、ヒロ!」
慌てて肩を揺らすと、ヒロは目を開けて「んー、なんだよ?」といつもの調子で話はじめた。
……ビックリした。
声をかけても反応がなかったから、なにかあったんじゃないかって……。
私はヒロが目覚めたことにホッとして「アラーム鳴ってるよ」と、平静を装いながらスマホを指さした。