この世界にきみさえいれば、それでよかった。





次の日。無事に登校日が過ぎて、また普段どおりの夏休みが帰ってきた。


部屋で繰り返されるアラームの音。これはいつもヒロが設定してるもので、寝起きのいいヒロはすぐにむくっと目を覚ます。

だけど今日は解除されるどころかずっと永遠に鳴ってるから、私のほうが先に目覚めた。


「ヒロ、時間だよー」

そう言ってベッドの下で寝ているヒロに声をかける。


朝寝坊することなんてないヒロがアラームで起きないなんて珍しい。


「ヒロ?」

横になっているヒロはピクリとも動かなくて、寝ぼけまなこだった私の頭が急に覚めてくる。


「え……ヒ、ヒロ!」


慌てて肩を揺らすと、ヒロは目を開けて「んー、なんだよ?」といつもの調子で話はじめた。


……ビックリした。

声をかけても反応がなかったから、なにかあったんじゃないかって……。


私はヒロが目覚めたことにホッとして「アラーム鳴ってるよ」と、平静を装いながらスマホを指さした。

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