この世界にきみさえいれば、それでよかった。
そのあとの記憶は曖昧だった。ただ電話を切ったあと急いで家を飛び出して駅前の中央総合病院に向かったことだけは覚えている。
看護師さんの説明だとヒロの事故は単独だったようで、曲がり角を曲がりきれずに転倒してしまったらしい。
「ヒ、ヒロ……っ!」
ヒロは病室ではなく待合室に座っていた。手や顔には擦り傷があって、すでに手当ては済んでいる様子。
「なんでお前がここに……」
「なんでじゃないよ!」
私はヒロに怒りながら、無事を確かめるように抱きしめる。
病院に向かってる間、生きた心地がしなかった。
ヒロになにかあったらどうしようとか、大きな事故だったらとか、そんなことばかりを考えて、今でも心配で胸が苦しい。