この世界にきみさえいれば、それでよかった。



「大丈夫なの?頭とか打ったりしてない?」

私はヒロを見てオロオロとするばかり。


「してねーよ。普通にコケて普通にかすり傷を負っただけ」

それでもガーゼが貼られている腕は痛々しくて、これは絶対にお風呂で滲みるやつ。


「でも本当によかった。ヒロが無事で……っ」

安心したら次は涙が溢れてきた。


今までたくさん怖いことを経験してきたのに、あんなに目の前が真っ白になる怖さは初めてだった。

自分よりもヒロになにかあることが、たまらなく怖かったのだ。


「泣くなよ。大袈裟だな」

ヒロは困ったように眉毛を下げて私の涙を拭った。


暫くしてヒロの名前が呼ばれて、そのまま受付へと向かう。すると、廊下の向こう側から白衣を着た人が歩いてきて、その足は私の前で止まった。


「結城さんのご家族の方ですか?」

なにやらとても険しい顔をしていた。ここで家族じゃないと言えば、その言葉の続きは話してもらえないような気がする。


「……妹です」

とっさに嘘をついた。

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