この世界にきみさえいれば、それでよかった。



そして帰り道。ドラッグスターは転倒したことによりミラーとライトが破損してしまい、ヒロが手で押しながら家路へと向かっていた。


「あー、全部で修理代いくらだろう」

隣でヒロは自分の身体よりもそのことばかり。


私の瞳に映るヒロは元気そうだし、なにひとつ変わったところはない。だからさっきの会話がまだ信じられずにいる。


ヒロが持っていた薬は心臓の薬?

ということは……ヒロは心臓病ってこと?

ありえない。信じたくない。けれど、ヒロが常に薬を持ち歩いていたのは事実だし、病院に通っていたことも私は知っている。


「ヒ、ヒロはさ……」

「ん?」


ヒロは心臓病なの?

なんて、聞けるわけもなくて私は「なんでもない」と誤魔化してしまった。

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