この世界にきみさえいれば、それでよかった。


「移植はした。成功もしたからこそ、今のヒロがいる。でもその移植した心臓にもタイムリミットがある」


「タイムリミット?」


とてもイヤなことが頭をよぎった。


「これ以上先は、ヒロに聞いたほうがいい」

美幸さんは私よりもずっと悲しい顔をしていた。


きっと私が想像するよりも深刻なことがヒロの身体には起きていて、ずっと一緒にいられると思ったのに時間はこの瞬間にも過ぎていく。


「タ、タイムリミットがあったとしても、また手術すれば……」


どうしても簡単に認められなかった。

ただ怖かった。ヒロの心臓に限りがあるなんて思いたくなかった。


「ヒロの心臓の周りの血管は人よりもすごく細いの。本当は一回の手術でも耐えられないだろうって言われてた」

「………」


「でも奇跡的に成功した。サユちゃんが言うように移植を何回か繰り返せる人もいる。でも簡単にドナーが見つかるはずがないし、ヒロは次の手術には耐えられない。だから次はない。もう一回はないのよ」


美幸さんの瞳が潤んだのを見て、これは現実のことなんだって、やっと実感が湧いてきた。

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