この世界にきみさえいれば、それでよかった。


そのあと瞳の赤さが消えるまで美幸さんとヒロのことについて話した。帰る頃にはすっかり辺りは暗くなっていたので、美幸さんとはそのままヒロの家の前で別れた。


「つか、卵買うだけでどんだけ時間かかってんだよ」

美幸さんの言うとおり大人しく寝ていたヒロからすぐに突っ込まれる。


「はは、ごめん。色んな話してたら盛り上がっちゃって」


私は冷蔵庫を開けて卵を買ってきたふり。


「姉貴は?」

「旦那さんが帰ってきちゃうからって急いで帰ったよ」

「ふーん」

私は自分が思っていた以上に平静を装えていた。

でも気を抜いたらまた悲しくなってしまうから、あえて忙しい素振りを見せてヒロの顔は見なかった。



「ってか、なんで掃除とかはじめてんの?」


畳んだバスタオルは脱衣場に持っていったし、シンクにあったコップなどの食器も洗ってしまった。

となると、あとは掃除しかないかなって、ホコリもないのに粘着クリーナーをやっている。

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