この世界にきみさえいれば、それでよかった。






カレンダーが8月から9月に変わり、夏休みが終わったタイミングで私はおばあちゃんの家へと帰ることになった。

といっても荷物の半分以上はまだヒロの家にあって、スペアキーも預かっているから自由に行き来できる環境にある。



「サユ。今日朝ごはんどうする?」

「じゃあ、お味噌汁だけ飲んでいこうかな」

「わかった。すぐ温めるね」


おばあちゃんは夏休み中のことをあれこれ詮索することはなかった。

おばあちゃんに苛立ちをぶつけることしかできなかった私の気持ちを理解しているように、ただ『おかえりなさい』と言って、また私を家へと迎え入れてくれた。


「……そういえば昨日、哉子から電話があってね。寛之さんと別れようと思うって」

お味噌汁を飲む私の手がピタリと止まった。


「え、いきなりなんで?」

先月に里帰りとか言って一緒に帰ってきてたくせに。


「詳しくは分からないんだけど、喧嘩した時に叩かれたらしくて『私にまで手を挙げてきた』って言ってた」


おばあちゃんの言いづらそうな顔を見て、私は冷静に残っていたお味噌汁を口につけた。

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