この世界にきみさえいれば、それでよかった。



一緒に暮らしてもいいなんて上から目線のうちは、まだなにひとつ母が反省していないことが分かる。


例え、お腹を痛めて産んでくれた恩があっても、それまで優しくしてくれた記憶があっても、守ってほしい時に母は私を守ってはくれなかった。

あの男と縁を切ったとしても、取り戻せないものもある。



「……だから自立するまでは迷惑かけちゃうけど、まだここで暮らしてもいい?」


おばあちゃんはまた親子で仲良くしてほしいと願っていると思うけど。


「迷惑なんて思わなくていいのよ。サユさえ良かったらここを本当の家だと思ってくれていいんだから」


「うん。ありがとう。おばあちゃん」


変わらないものもあるし、少しずつ変わっていくこともある。


まだ大人になるのは程遠いけれど、こうしてゆっくりと前に進んでいきたいと、今はそう思ってる。

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