この世界にきみさえいれば、それでよかった。



「おはよー。昨日のドラマ見た?」


学校に着くと、クラスメイトは新しくはじまった恋愛ドラマの話題で盛り上がっていた。

新学期になっても教室の雰囲気はなにひとつ変わらない。でも制服が衣替えでブレザーになって私はパーカーを着なくてもよくなったおかげか、あまり好奇な目で見られることは減った。

だからと言ってすぐに友達ができるわけもなく、私は相変わらずひとりだけど、孤独感は不思議とない。


【今日、うちに来る?】


スカートのポケットでスマホが振動して、確認するとヒロからのメールだった。

ヒロはあれから薬も私の前で隠すことはなくなったし、バイクの運転もやめた。バイトは今でも行ってるけれど、学校も始まったしあまりシフトは詰め込んでいない。


【行く予定だよ】

【それなら、ちょっと時間ずらして来て。今日三木をうちに呼んで話すから】


実はヒロはまだ奏介くんに病気のことを話していない。

薬のことを尋ねた時の反応からして奏介くんはなにも知らないということは分かっていた。


言うタイミングがなかったなんてヒロは言ってたけど、きっと奏介くんの前では対等でいたいという気持ちがあったんじゃないかって思う。

ヒロは心配されたり気を遣われたりするのが苦手だから。

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