この世界にきみさえいれば、それでよかった。



「……奏介くん!」

奏介くんは駐車場にいて、ちょうどバイクに乗る寸前だった。私の呼び掛けに止まってくれた奏介くんの顔もまたヒロと同じで暗かった。


「サユちゃんはいつから知ってたの?」

とりあえず私たちは駅の方角へと移動することになり、奏介くんはバイクを手で押しながら歩いてくれた。


「私も知ったのはつい最近です」

薬の存在には気づいていたけれど、まさか心臓病のものだなんて夢にも思ってなかったし、きっと一緒に生活していなければ私もいまだに病気のことなんて知らなかったかもしれない。


「心臓に寿命があるとか本当なの?俺、全然まだ頭の整理がつかないんだけど……」

奏介くんの顔が怒りから悲しみに変わっていく。


私だって信じたくはない。でも否定し続けたって時間は刻々と進んでいってしまう。

信じたくはないけれど、信じてあげられないままヒロを失いたくはないという気持ちだけは強くある。


「本当にひでーよ。急に病気だとか、急にそんなに長くないとかさ。言われたほうの気持ちも知らないでアイツは悪い悪いって……」

奏介くんの足がピタリと止まった。


「あんなヤツ友達でもなんでもねーよ。そんな大事なことを今まで隠してたくせに今さら打ち明けられたって……」


「そんなこと言わないでください」

私は強い口調で言った。

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